変形性膝関節症の保存治療

X線でまだ関節裂隙が半分(50%)以上保たれているうちは、保存治療の対象となります。

保存治療法は、痛みをとり、膝が完全に曲がりきらない状態や伸びきらない状態を改善して、膝の機能を高めることを目指して行われます。症状が軽い場合は痛み止めの内服薬や外用薬を使ったり、膝関節内にヒアルロン酸の注射などをします。また大腿四頭筋強化訓練、関節可動域改善訓練などの運動器リハビリテーションを行ったり、膝を温めたりする物理療法を行います。足底板や膝装具を作成することもあります。

参考資料↓

https://www.joa.or.jp/public/publication/pdf/knee_osteoarthritis.pdf


以下に、それぞれの保存治療法の意義と実際について簡単に説明します。

[薬物療法]

変形性膝関節症は歩行時や労作時の物理的な痛みが主です。なので、痛み止めの内服薬や外用薬が劇的に効くということはありませんし、長期に使用するといろいろと怖い合併症(胃潰瘍や腎機能障害)が心配です。なので、安静時の疼くような痛みや無理をして炎症を起こしていつもより痛みがつらくなった時(急速増悪時)に、短期間、限定して使用することが望ましいでしょう。つまり、薬を怖がる必要はありませんが、薬に頼りすぎないことが大切です。

膝の中に直接薬剤を注入する関節内注射というものもあります。ヒアルロン酸という軟骨成分の一種を、1〜2週に1回のペースで計5回ほど注射するのが一般的です。初期〜中期の変形性関節症では、関節の潤滑機能の改善や軟骨の保護作用が期待できます。しかし残念ながら病期が進行した膝では、あまり大きな効果はありません。

[筋力訓練]

膝の痛みは、歩くときや、階段や椅子からの立ち上がりなど、日常的におこなう動作の大半で生じる膝の横揺れ現象(lateral thrust)が主因と考えられています。グラグラとすることで、痛みが出て、軟骨を削っていくことになります。筋力訓練は膝周囲筋(主に大腿四頭筋)を強化することでこの現象を防ぐことが目的です。さらに股関節や足関節を動かす筋力も同時に鍛えることで、膝の負担を軽減することができます。

必ず、膝に痛みを感じずにできる正しい方法(🔜)で訓練してください。横になったり椅子に座ったりして、直接、膝に体重がかからない状態で、膝を動かしたり、脚を宙に浮かして鍛えます。訓練中に膝に痛みを感じるときは我慢せずにやり方を見直しましょう。痛みは身体が発する危険信号です。なので、痛みを感じるということは、その運動でかえって膝を痛めつけているということです。

*「あんた歩かんと歩けなくなるよ」とか「歩いて足の筋肉を鍛えないかんよ」と云って、膝がどんなに痛くてもウォーキングなどを強く勧める隣人が多いようです。しかし、軟骨が傷んでしまった膝には、ウォーキングのように膝に直接体重がかかるような運動は逆効果です。また、ウォーキングやランニングは心肺機能の訓練には良い運動ですが、下肢の筋力アップは期待できません。

[可動域訓練]

変形性膝関節症は、進行すると、膝の曲げ伸ばしがしにくくなってきます。 そうなると、膝の周りの筋肉が固くなって力が入りにくくなったり、歩きにくくなるなど、支障をきたしてしまいます。さらに、関節面の狭い範囲だけに負担がかかり、その範囲の軟骨がどんどん傷んでいくことになってしまいます。そのため、普段(早期)から関節の可動域を大きく保つ努力が必要となります。また、意外と忘れがちなのは、膝の上下の股関節と足関節の動きです。これらが硬いと、膝がよけいに頑張らないといけなくなります。股関節ー膝関節ー足関節の全ての可動域を保つことが必要です。

これらの治療でも痛みが緩和されない場合に外科的療法を行います。

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