前十字靭帯 (ACL) 再建術

私が第一選択として採用する前十字靭帯再建術は以下に記載する半腱様筋腱を用いた解剖学的三重束ACL再建術です。様々な理由で半腱様筋腱が使用できない、望ましくない場合に限って、内側1/3の骨付き膝蓋腱を用いた長方形骨孔ACL再建術を行なっています。いずれも、世界的に最も著名な、大阪 行岡医療大学教授 史野根生 先生が研究・開発した最も優れた術式です。

[ 解剖学的三重束ACL再建術 ]

ACLは本来1本のねじれた線維ですが、そのねじれに沿って細い多くの線維束に分けれるようです。これを機能的に整理すると前内側束(Anteromedial bundle: AMB)、中間線維束(Intermediate bundle: IMB)、後外側束(Posterolateral bundle: PLB)の3本に集約することができます。AMBとIMBは若干似た性質を持っているので区別されずに合わせてAMBとされ、これにPLBを加えた2束を再建する二重束再建術が一般的です。しかし、理論的に3束であれば(例え難しくても)3本で再建しようというのが、解剖学的三重束ACL再建術です。

ACL graft.jpg

まず、半腱様筋腱を採取し、V字状のAMB・IMB共用移植片を1つ、PLB用に短冊状移植片を1つ作っておきます。基本的に薄筋腱は使いません。


大腿骨側ACL付着部の最後方の骨軟骨境界部に2つ骨孔を穿ちます。

ACL 骨孔2.jpgACL 大腿骨骨孔2.jpg

脛骨側ACL付着部(下の図では逆C型)に3つの骨孔を穿けます。

ACL 図 脛骨付着部 断面.jpgACL 脛骨骨孔2.jpg

まず、大腿骨側の下方のPLB骨孔と脛骨の後方のPLB骨孔の組み合わせで、PLB移植片の両端を骨の中に引き込んで移植します。次に、大腿骨側の上方のAMB・IMB共用骨孔にV字状移植片の折り返し側を引き込み、V字状移植片の2つの自由端をそれぞれ脛骨の前方のAMB骨孔とIMB骨孔の独立した2つの骨孔に引き込みます。固定は、大腿骨側はEndobutton、脛骨側はDSPというデバイスを用いて、膝屈20°で一定の張力下に固定します。

写真 左:外側ポータルからの鏡視像。
   右:内側ポータルからの鏡視像。
            (PLBは影になり見えない)

術後に3D-CTを撮ると、骨孔の位置、すなわち、移植腱がどの様に移植されたかを正確に知ることができます。下図は、現時点で私が正しいと考える位置に穿けた骨孔です。

ACL CT 大腿骨2.jpgACL CT 脛骨.jpg

左:大腿骨側の2つの骨孔    右:脛骨側の3つの骨孔

*手術の成功には骨孔の位置が非常に大切です。多少の術者間の違いはあっても、解剖学的付着部の中になければ、けして良い結果はでません。ゆるんだり断裂したりする明らかな原因やエピソードが思い当たらないのに、リハビリの期間中でまだ復帰もしてないのに再断裂した? リハビリを頑張って膝を伸ばせるようになったら自然に緩んでいた?という残念なエピソードの多くは、骨孔の位置がよくない可能性があります。疑問が生じたら、3D-CTで骨孔の位置を確認してもらうことを推奨します。

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